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化学合成油は、戦後のジェットエンジンの進歩に合わせて開発され、耐熱性においては200℃を超えても使用出来る(ニトリルゴムの耐熱性から考えるとオーバースペック)と言われています。
またオイル分子が極性(昔、ひまし油をレースで用いたのは、植物系オイルの分子の極性による吸着力を利用したので、植物から作られるエステル系化学合成油は、ひまし油をヒントに生まれたとも言える)を持ち摩擦面に吸着するので、
充分な厚みの油膜を保持していない境界潤滑域(ドライスタート時の各摩擦面や高負荷時のカム、メタル部に多く発生)でも、ナノオーダーの高分子膜で二面間を潤滑します。
米国がパラフィン系鉱物油の輸出に慎重になった結果、ジェット・エンジンの運用で危機感をつのらせたヨーロッパ勢がエステル系オイルを開発したのが本当の話らしい。
従来のオイルでは油圧とか粘度により摩擦面にオイルを鋏みますが、エステル系化学合成油はオイル分子による電気的極性で摩擦面に吸着して、摩擦面同士の接触を防ぎます。
この性質によって低粘度でも潤滑を維持出来る特性を持ちます。
超音速ジェットエンジン用に開発された耐熱性の高い化学合成油 は、米国のAMS OIL社(社長が元空軍ジェット戦闘機パイロット)によって自動車エンジン用として世界で初めてデビューしましたが、
エステル系化学合成油では高負荷時のメタル部や、摩擦部の周速度が大きく変化するカム表面の境界潤滑域でフリクション・モデファイアーとして効力を発揮できるのが最大の特徴です。
エステル系は低粘度でも潤滑性を持つので、流体潤滑域でオイルの粘性抵抗を減らして省エネ効果を狙うには最高のオイルですが、エステル単体ではシールを膨張させる攻撃性が有りますから単体で使用される事はめったにありません。
エステルと言うと特別な成分に思われますが、 テンプラ油も立派なグリセリンと脂肪酸が結合したエステルです。エステルは水分で加水分解される欠点がありますが、
最近のコンプレックス・エステル(化学式が複雑で大きな分子になっている)では改善されている様ですと言っても水分に対する安定性では鉱物油にはかないません。
化学合成油はエンジンオイルの王様と考えがちですが、シールへの攻撃性と歴史の永い優れた鉱物オイル用に開発された添加剤の添加量に限界がある短所があります。
動植物系のエステルと鉱物油から発展した化学合成油のポリアルファ・オレフィン(PAO)とでは、正反対にシールを膨張収縮させる傾向があります。
これらの正反対の性質の2種をブレンドし利用してシールへの攻撃性を相殺した物も作られていますが、 高級エンジンオイルと思って化学合成油に替えたらオイル漏れが始まったなんて笑えない話もあります。最近のAMS'OILは、弾性潤滑域で有利なPAOをベース・オイルに採用しているみたいです。
化学合成油は耐熱性も高く、境界潤滑性能も優れているのでフルチューニングのターボエンジンやレーシングカーには最適ですが、シールへの攻撃性や加水分解されやすい点(エステル系の場合)で、
オイル交換のインターバルの永い一般的な車では鉱物油に軍配が上がる場合もあります。
勿論、マイクロフロンΠ、マイクロセラの添加で鉱物油でも境界潤滑特性は改善されてしまう点を考えると、 果たして一般車両での価格の高い化学合成油の使用に意味があるかどうかは疑問です。
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部分化学合成油は、鉱物油の低コスト、多量に添加剤を配合出来る性質と化学合成油としての耐熱性、潤滑性の双方の良い所取りをした物です。
それと一番の製造理由は、売り値に比べ製造コストが格段に安く利益率が大きい事です。
部分化学合成油とは、鉱物油に10%〜30%程の化学合成油を混ぜただけですから安く出来て当然です。その理屈を知ると詐欺みたいに感じてしまいます。
勿論、品質と価格からすると価値は充分にあるのですが、耐熱性では完全化学合成油にはかないません。混合されたエステルの成分は摩擦面に張り付きますので境界潤滑性はまあまあです。
ラリー車の多くは部分化学合成油を好みますし、F1でも化学合成系の油性の小ささからくる油膜切れを嫌い、部分化学合成油を使用するチームも多いので、レシプロ・エンジンのスポーツ用エンジンオイルとしては実用的なのかもしれません。
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まとめとして賢いオイル選びになりますが、無名ブランドの米国製鉱物油(数百円/リットル程度でも充分な潤滑性能を持っている。
潤滑能力と値段は必ずしも一致しない見本)をお勧めします(プラスチックボトルに入っているのを探すのがコツ)。前述の通りに鉱物油の品質はピンキリで、ベースオイルの産油地で品質が決まります。
もちろん、油田の枯渇で産出量が減っているペンシルバニア州産原油の中でも、特に優れたブラッドフォード(Bradford)油田産出の原油を使用している アマリー社等の鉱物性オイルの性能は化学合成油を上回る事もありますが、
価格も化学合成油に負けません。一般市街地走行の使用では、米国内で一般的に市販されている鉱物油がコストパフォーマンスに優れていると言えるでしょう。
オイルの値段は知名度で決まりますので、無名ブランドの米国製鉱物オイルをディスカウントショップで見つけたら、安くまとめ買いして早めのオイル交換するのが利口です。
当ホームページを見られたお客さまからのご報告で、米国製鉱物油を格安(問い合わせ当時160円/約0.9リットル)にて販売しているホームセンターが有り、福岡や千葉の幕張にも開店したそうです。このオイルはマイクロフロンΠ、マイクロセラ、メタルチューニングの三種混合添加で、自然吸気エンジンならサーキット走行もこなしてしまうとの報告も頂いております。
もちろん、これらの優れた米国製鉱物油でも2000km程度の走行でタレを感じますが、その時点でも新品の中近東系鉱物油と同じ位の潤滑性を持っていると思われるほどです。
余談ですが、太平洋戦争時にデビューした中島飛行機(現在のスバル)の戦闘機「疾風」に搭載されていた誉エンジン(2000馬力で世界トップクラス)は、
米国の一般家庭で使用されている自動車エンジンオイル(この頃はペンシルバニア産だったでしょう)を前提に作られていたそうです。
疾風は当時としては卓越した重戦闘機で、中国の成都を発進して北九州の八幡製鉄を爆撃目標として5000メートルの高度で本土に侵入して来たB29の殆どを撃墜し、爆撃照準を犠牲にしても成層圏を飛行せざる得ない状況に追い込んだ名機でした(当時の日本の戦闘機はゼロ戦も含めてスーパーチャ−ジャ−の搭載は常識でした)。
ドイツ爆撃の主力爆撃機のB17より性能の高いB29が、日本の防空戦闘機によって700機以上(約4000機が生産された)が撃墜されていたのは、まったく知られていない史実です(ナチスの防空能力より日本の防空能力の方が優れていたと言う事です)。
ただし、米国からの鉱物系エンジンオイルの輸入が途絶えて在庫分を使い切ると、たちまち故障だらけの悪評高いエンジン」に成り下がりました。
この誉エンジンを設計したのは若き日の故中川良一氏で、戦後はプリンス自動車でスカイラインを開発しました。伝説的なGTRの活躍の源流は何と、誉エンジンに行き着くのです。若き日に達成できなかった米国の戦略爆撃機に対する反撃を戦後、それらを製造していた米国自動車産業に壊滅的打撃を与える車を開発したのは特筆すべき事で、現代の日本の繁栄を甘受している青年達には心すべき歴史的事実である。
2000km程度でオイルがタレるのは、粘度指数向上剤のポリマーの劣化特性と見事に一致します。安物の中近東系鉱物油では、2000km走行でお話にならない位に潤滑性の劣化を感じます。
勿論、マイクロフロンΠ、マイクロセラの添加で交換サイクルを大幅に伸ばす事は出来ますが、これらの固体潤滑剤は本来、金属磨耗する部分に代わって消耗しますので、
途中追加添加するのも一考です。
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激安米国製鉱物オイル
左記(写真上)の超激安オイルの信頼性を、某自動車メーカーのモータースポーツ技術関係者に伺いましたら、偶然にもこの激安オイルを自家用車に愛用されているとの事でした。鉱物油としては非常に高い品質(オートメカニックでテストした物より上らしい)だそうで、一般走行用には充分な潤滑性を持っていて、以前よりカートン単位でまとめ買いをしているそうです。
何でも、米国のカートのオイルスポンサーもしていて、米国では有名ブランドだそうです(ライスさんは、この会社出身らしいです)。ミネラルウォーターよりオイルの方が安い米国から直輸入直売ならではのお話です。ただし、このオイルを取扱っているコストコは会員制で入会金が初回に4000円必要となります。
この経費を計算すると、400円/リットル程度の米国製鉱物油が近所に売っていれば、そちらを買った方が良いのかも知れません。
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OW-20の怪! 最近の車の適合オイル粘度指数が著しく小さな値となって来ています。
近年の省エネの流れで燃費を改善する目的でそうなったと思っておりましたが、真相は寒冷始動時での排気ガス浄化が目的でした。
新エンジンを開発した時、 ヨーロッパでは−10℃、日本では0℃においてエンジン始動した場合の排気ガス成分の官庁への届出制があります。
エンジンが冷えている場合の排気ガスを綺麗にするには、どうしても冷えているオイルの粘性抵抗を下げる必要があります。また、国内で記録されている最低気温もクリアするエンジンの始動性も考慮に入れなければなりません。
そんな理由で登場した0W-20と言うオイルは、高速回転域でのピストンリング磨耗の問題点が自動車工学専門誌にて指摘されています。
寒冷時以外はオイル粘度も低くなっていて環境問題もありませんので、もう少し粘度の高めのオイルを選ばれた方がエンジンには優しい筈です。
エンジン設計の専門家のお話によると、総合的に見てこれらのエンジンには5W-30辺りがよろしいのだそうです(実際問題、使用条件が厳しい商用車に0W-20を指定している自動車メーカーは無いですね)。
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オイル交換インターバル25,000Kmの怪! 最近、オイル交換のインターバルを25,000Kmとしてきている外車メーカーがあります。
勿論、オイル交換を25,000Km毎にしてもエンジンに問題は起きないと思います。弊社の知っている某中堅オイル会社では、営業車でオイル無交換と継ぎ足しで、どこまで走れるかテストをした事がありました。
結果として、その国産営業車は10万kmまでエンジンに問題は出なかったそうですが、10万kmを過ぎたとたんにガタガタになってしまい、廃車せざるを得なかったそうです。
ようするに汚れて劣化したエンジンオイルで走っても(もちろん、空気がきれいな鋪装道路のみ)致命的な故障は起きないと言うのが真実らしいです。
そんな理由からオイル交換を25,000Kmにした背景を推測すると 、10万kmを一つの買い替えの目安としているのではないでしょうか。現実問題、耐久性の有り過ぎる車を作って経営が苦しくなった自動車メーカーもあったそうですから、充分に考えられるストーリーです。
純正エアフィルターは濾紙で出来ている関係で、濾過能力が30ミクロン(約1/30mm)までしかありません。
エンジン内部の摩擦面は、フィルム状のオイルで潤滑されている流体潤滑でも30ミクロンの隙間を保つ事はできないのです。エンジンオイルの汚れの70%はエアフィルターを通過した空気中の汚れとのレポートが
オーストラリアで発表されているそうです。ですから、エンジンオイルの耐久性は決して空気のきれいな実験室で決められるものではありません。
粉塵の多い地域での走行では、信じられない程にオイルの中に研摩作用のあるガラス質の塵埃が混ざってしまいます。オイル交換を早めにお勧めする本当の理由は、新車のコンディションを如何に長続きさせるかです。
10万km以上、愛車のエンジン・コンディションを最高に保ちたい方にのみ、早めのオイル交換と優れたオイル添加剤をお勧めしているのです。
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駆動系オイルに関しては、絶対的に化学合成油に軍配が上がります。特にATFではトランスミッションの寿命(ショックの出始めたトランスミッションのATFを化学合成油にしたらショックが無くなるケースもあります)まで影響しますし、極圧の大きなデフ・オイルにも化学合成油は素晴らしい効果を発揮します。少々値段ははりますが、交換サイクルが永いので大きな負担にはならないはずです。
ヨーロッパ車に搭載されている ZF社製オートマミッションでも米国製化学合成ATFを使用すると国産オートマミッション並の耐久性が出ます。 ZF社製オートマミッションは耐久性が無いのではなくて、ヨーロッパ製ATFの能力が低いだけだったみたいです。 |

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